
パルプの漂白において発生する有機塩素化合物はパルプ中の残留や環境への蓄積について大きな関心をひいているが, その実体はまだまだ解明されていないことが多く, 憶測で議論される場合がかなりある。トロント大学のリーブ教授は広範囲の文献調査・実態調査と自らの研究成果から漂白排水中の有機塩素の特性を概説し, 一般に言われていることの誤りを指摘し, もっと科学的な視点で議論すべきであると主張している。ここにその論文を紹介し, 有機塩素化合物に対する理解と認識の助けとなることを期待する。この翻訳・掲載を許可されたリーブ教授の好意にあらためて謝意を表する次第である。オンタリオ州環境省は紙パルプ産業に対しAOXとして測定される有機塩素化合物の放出を制限し, 2002年までにAOXを除くことを目指す規制を提案した。この規制案はAOX (漂白クラフトパルプ工場排水の有機塩素化合物) も他の有機塩素化合物と同じであるとする誤った前提に基づいている。有機塩素化合物のある種のものは毒性, 永続性, 生体蓄積性等があり, これらのものを環境へ放出することは留意すべきである。しかし, そうでない有機塩素化合物も多くある。五大湖地方において, 有機塩素化合物に属する塩素化炭化水素が深刻な問題を引き起こしているが, AOXはそれらとは基本的に異なる化学物質の混合物である。AOXの化学的性質は複雑でまだ完全には分かっていないが, すべてのAOXとは言えないまでも, その大部分は毒性がなく, 永続せず, 生体蓄積性もない。したがって, このような物質を取り除かねばならないとするのは正当ではない。これらの規制は環境保全のためとされている。パルプ工場の排水が有害な影響を引き起こすことを示す研究例がいくつかある。しかし, その排水の有害な影響とAOXとの間には関係はなく, 同じような影響が漂白を行っていない工場の排水でも引き起こされる。カナダ連邦政府は, 文献の詳細な調査と自ら行った環境への影響の研究から, AOXはパルプ工場の排水の規制として適切でないと決定した。環境の改善が期待出来ないのにAOXを取り除くべきとするのは正しいことではない。これらの規制はMISA (Municipal Industrial Strategy for Abatement) プログラムの一部とされている。MISAプログラムの基礎となる考え方はBAT-EA (Best Available Technology-Economically Achivable-利用出来る最善の技術で経済的に可能) を適用することである。AOXの放出を禁止するとその経済的な影響は重大である。巨額の設備投資が必要になり, パルプの品質が悪くなり, コスト高で不確かな市場に販売することになる。AOXの禁止は現時点では経済的に達成出来ない。提案では, そのよって立つ基準は科学的に明らかであるとしている。しかし, この問題に関する多くの証拠が無視されている。科学的な理解は時と共に発展するが, 規制は提案されると, たとえ新しい科学が何かを見出しても, 今後十数年に亘って変えられないだろう。AOXの排出を禁止する規制案は, 現在科学的に分かっている事実によっても正当でなく, 現在の技術では実施出来ないくらい高価なものになるだろう。漂白クラフトパルプ生産排水の命運 (環境での変化や消滅) と影響をより正確に知り, かつ, 必要な場所でその環境を守るために効果的なそして経済的な技術を確立するため, 研究と科学的調査のプログラムを作ることを提言する。AOXの放出を零にする規制案は延期され, この規制が実行された際の環境及び経済的な影響を調査した後, 再検討されることを提言する。
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