Do the share buttons not appear? Please make sure, any blocking addon is disabled, and then reload the page.
この論文は、ベンヤミンの歴史叙述の方法に、ブレヒトの叙事詩的演劇における「引用可能な身振り」という手法がどのように影響しているかということを問題にしている。ベンヤミンが自身の歴史叙述に対置している、いわゆる歴史上の出来事を因果的連鎖として綴られた歴史主義は、進歩史観を支える均質で連続的な時間意識を基盤としている。それに対して、ベンヤミンによる新しい歴史概念は、歴史が叙述されるまさにその「現在」という時間のもとに構成される。そのためには、まず、第一に、時間の連続性の打破が求められている。一方、ブレヒトの叙事詩的演劇では、芝居の途中に状況を説明するソングや文字幕を挿入することによって、筋の時間的流れが「中断」される。その結果、特定の振る舞いが確立され、模倣・引用し得るものとなる。ベンヤミンは、この「中断」をテキストの「引用」を可能にする根本的なやり方であり、芸術の領域を遙かに越えていくものとみなしている。すなわち、ベンヤミンの場合、歴史の連続性を「中断」することによって、過去の「身振り」を引用しようというのである。その際、この「身振り」の引用は、それが置かれていた本来の文脈にある価値基盤を破壊する「パロディ」的批判力を持ちあわせると同時に、現在の「布置状況」に引用されるがゆえに、現在の「根源」の呈示を可能にするのである。
Do the share buttons not appear? Please make sure, any blocking addon is disabled, and then reload the page.